ガイド
AIで契約書を審査するのは、弁護士法に触れますか
通常の契約締結に向けた検討を支援するサービスが、直ちに弁護士法72条に違反するわけではありません。法務省は2023年8月のガイドラインで、通常の業務に伴う契約締結に向けた話合いや法的問題点の検討は、多くの場合「事件性」がないとの考え方を示しました。
ただし線引きは、案件の性質やサービスの設計・使われ方で変わります。このガイドは、2023年と2026年のガイドラインを踏まえて、条文の要件、ガイドラインの要点、サービスを選ぶときに確かめることを順に整理します。
公開 2026年9月6日 最終更新 2026年10月12日 Nomaris編集部
条文
弁護士法第72条の5つの要件
弁護士でない者が法律事務を扱うことを禁じる条文です。次の要件がすべてそろう場合に違法となり得ます。
- 弁護士でない者
- 弁護士または弁護士法人でない者が主体であること。
- 報酬を得る目的
- 直接の利用料に限らず、別の有料サービスとの間接的な対価関係等も、具体的事情によって考慮されます。無料で提供していれば常に対象外というわけではありません。
- 法律事件に関して
- 訴訟事件、非訟事件、審査請求などの不服申立事件、その他一般の法律事件。「その他一般の法律事件」に当たるかを、事件性の有無で判断します。
- 法律事務を扱う
- 鑑定、代理、仲裁、和解その他の法律事務を取り扱うこと、またはこれらの周旋をすること。
- 業として行う
- 反復継続の意思をもって行うこと。
5つがすべてそろった場合に違法となり得ます(法律に別段の定めがある場合を除きます)。該当するかは、個別の事実関係に基づいて判断されます。
ガイドライン
法務省のガイドラインは何を示しましたか
2023年8月、法務省大臣官房司法法制部は「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」を公表しました。契約書の作成・審査・管理を支援するサービスについて、第72条の要件ごとに考え方を整理したものです。
要点は事件性の扱いです。企業法務で取り扱う契約関係の事務のうち、通常の業務に伴う契約締結に向けた話合いや法的問題点の検討は、多くの場合事件性がないとされました。第72条に当たるかは、事件性の有無を含め、実際の案件・サービスの設計・利用状況等により判断されます。一方、紛争が具体化した案件についての鑑定や代理は別です。
参考:法務省大臣官房司法法制部のガイドライン(令和5年8月公表)。
2026年
2026年8月の新ガイドラインで何が変わりましたか
法務省は2026年8月21日、「ビジネス分野におけるAI等法務業務支援サービス提供と弁護士法第72条の関係について」を公表しました。2023年のガイドラインを補完・拡充し、契約書レビューに限らず、AI等を利用した企業法務支援サービスについて考え方を整理したものです。
判断に当たっては、サービスの目的・設計・機能だけでなく、利用者がどのように利用しているか、提供者がその状況を認識し、どう対応しているかも問題になります。特に、紛争が現に生じている案件や、紛争が生じることがほぼ不可避な案件について、AIによる法的助言や紛争処理を目的としたサービスを提供する場合は注意が必要です。
また、ガイドラインは、AIが弁護士に代わって最終判断をすると誤認させない表示、利用上の注意を入力前や出力時に示すこと、必要に応じて弁護士による実質的な監修・関与を確保することなど、適切な運用のための措置を推奨しています。これらは法律そのものの追加要件ではありませんが、サービスを安全に提供・利用するうえで重要な指針です。
確認点
AI法務サービスを選ぶときの確認点
- サービスの提供主体と判断の範囲
- 誰がサービスを提供し、AIはどこまで処理するのか。最終的な法的判断の主体、弁護士が関与する場合の範囲、紛争案件の扱いが明確かを確認します。
- 事件性のある案件の扱い
- 紛争や紛争のおそれがある案件を受けるのか、受けるなら弁護士がどう関与するのか。「何でもAIで」と書いてあるサービスは避けます。
- AI出力の確認体制
- 出力が参考情報・文案であることが示されているか。必要に応じた人による確認や、弁護士等への相談の目安が説明されているかを確認します。
- 情報の取り扱い
- 契約書と相談内容を学習に使うか、企業ごとに分離しているか、誰がアクセスできるか。
Nomaris
Nomarisはどう設計していますか
Nomarisは、法務相談の受付、案件管理、文書作成支援を提供するプラットフォームです。AIは資料の整理、過去案件との比較、初稿の作成に使います。AIによる分析は法務業務を補助するものであり、最終的な法的判断ではありません
紛争など事件性のある案件で、AIが弁護士に代わって法的助言や代理交渉を行うサービスではありません。必要な場合は弁護士への相談をご検討ください。顧問弁護士との併用もできます。
よくある質問
契約書レビューを弁護士でない会社に頼んでも問題ないですか
弁護士以外の事業者による契約書レビュー支援が、直ちに弁護士法72条違反となるわけではありません。通常の企業活動に伴う契約締結の検討は、多くの場合「事件性」がないと整理されています。ただし、紛争が顕在化した案件などについて個別の法的助言や紛争処理を行う場合は、同条との関係を慎重に検討する必要があります。サービスが対応する案件の範囲と、最終的な判断を誰が行うかを確認してください
「事件性がある」とはどんな案件ですか
法的紛争が現に生じている、または生じることがほぼ不可避な事情がある案件が典型で、個別具体的に判断されます。相手方から損害賠償を請求されている、契約の解除を通告された、といった状態が例で、通常の契約締結に向けた検討は多くの場合これに当たりません
ガイドラインは法律ですか
法律ではなく、法務省が第72条の解釈について予測可能性を高めるために公表した考え方です。最終的な判断は裁判所が行いますが、事業者と利用者が設計と選択の拠り所にできる公的な文書です
線引きを説明できる サービスを選んでください
Nomarisの設計と運用は、商談の場で具体的にご説明します。事件性のある案件の扱いも含めて。
資料でも概要を読めます。
本稿は日本法に関する一般的な情報です。法令の適用や条項の有効性は、取引の実態・当事者・契約内容によって異なります。記載例は検討用の一例であり、実際の契約条件に合わせた調整が必要です。
AIによる分析は法務業務を補助するものであり、最終的な法的判断ではありません